「フィルムで撮ってほしい」というご要望をいただくことが増えました。2017年ごろはまだ珍しかったのですが、最近は最初からフィルムを指定してくださるお客様も少なくありません。なぜ今、フィルムなのか。デジタルとの違いは何か。実際に両方使っている立場から、正直にお話しします。

フィルムの粒状感は「欠点」ではない

デジタルカメラのノイズとフィルムの粒状感は、見た目は似ていますが全く別物です。デジタルノイズはランダムで均一感がなく、写真の質感を損なうことが多い。一方、フィルムの粒状感(グレイン)は有機的で、写真に触れられそうな質感を与えます。Kodak Portra 400は特に肌の色の再現が自然で、結婚式の白いドレスと肌の色を同時に美しく写せる数少ないフィルムです。

色の深みはポストプロセスでは作れない

デジタルで撮った写真をフィルム風に加工するLightroomプリセットは数多くあります。でも、実際にフィルムで撮った写真と並べると、違いは明らかです。フィルムの色は、光が乳剤層に直接反応した結果であり、後から加工して作るものではありません。特にKodak Portra 400のシャドウ部分の色の乗り方は、デジタルでは再現が難しい。夕暮れの光の中で撮った写真が、なぜか映画のように見えるのはそのためです。

デジタルと併用する理由

フィルムだけで結婚式を撮ることは、正直なところリスクがあります。フィルム1本36枚、シャッターを切るたびにコストがかかる。決定的な瞬間を逃すわけにはいきません。だから私はデジタル(SONY α9 II)でしっかり記録しながら、フィルムで雰囲気のあるカットを撮るという方法を取っています。デジタルは保険、フィルムは表現、という感覚です。

現像は中目黒のLab Grainで

撮影後のフィルムは、中目黒にある「Lab Grain」に持ち込んで手現像してもらっています。機械現像ではなく手現像にこだわるのは、現像液の温度と撹拌のタイミングを微調整できるからです。同じフィルムでも、現像の仕方で仕上がりが変わります。Lab Grainの担当者とは2019年から付き合いがあり、私の好みの現像スタイルをよく理解してくれています。

フィルムとデジタルのどちらが良いかという問いに、一つの答えはありません。大切なのは、その写真が何年後かに見たときに、あの日の空気を思い出させてくれるかどうかだと思っています。撮影についてのご相談は、いつでもお気軽にどうぞ。